腕立て機構を作る

腕立て君の機構部分を作ります。 ロボットの機構部分というと、 部材の加工から行わなくてはならないのでしょうか? いいえ。 ここでは、田宮模型の「楽しい工作」シリーズの部材を使って 簡単にロボットを組み立てました。

腕立て機構の写真

アジェンダ

腕立て機構の仕組み

このロボットは、 モータの回転運動を平行運動に変換する機構を使って腕を上下させ、 体を持ち上げます。 下の図は、腕を縮めた状態から伸ばした状態への変化を表しています。

腕立て機構の仕組み

上の図で、丸い部分がモータとクランクです。 クランクの先端は、大きいほうの円周を回ります。

一方、腕は、平行四辺形を形作っているので平行移動しかしません。 この腕にクランクからリンクをつなぐと、 モータの回転運動が腕の平行移動に変化します。

この腕の平行移動によって、ロボットは体を上下させることができます。

組み立てに必要な部材

このロボットは、田宮模型の「楽しい工作」シリーズの部材を使っています。

実際に使用した商品
型番品名イメージ価格個数備考
ITEM 70162 リモコンロボット製作セット (タイヤタイプ) リモコンロボット製作セット 3000円1 このセットだけでリモコンロボットを作成することができる お徳用セットです。 リモコンロボットを作る代わりに 腕立て君の部品として使用しています。
ITEM 70093 3速クランクギヤボックスセット 3速クランクギヤーボックスセット 500円1 ギヤボックスのセットですが、 セットの中の短いシャフトとボス部品だけを使用しています。

組み立てる

ここから組み立ての工程を説明します。 それぞれの部材の加工法と使用法の詳細は、ここでは説明しません。 製作セットに付属の説明書を参照してください。

肩を付ける

組み立ての最初の工程では、 肩を作ります。

肩の使用部品一覧
部材仕様個数
プレート-1
P2パーツ-1
Q2パーツ-2
Q3パーツ10x10mm t3.02
プッシュリベットオレンジ2
丸ビス3x10mm4
ナット3mm4
肩の構造の写真

この工程では、 肩になるQ2パーツプレートに 取り付けるのですが、そのまま取り付けると肩幅が狭くなり、 後の工程でクランクを取り付けたときに邪魔になります。 このため、P2パーツで肩幅を両側に10mmずつ延長したうえで、 Q2パーツを取り付けました。 この写真では、右肩しか取り付けていませんが、 実際には、両側に取り付けます。

肩の取り付けの詳細写真

肩の取り付け部分の詳細は、上の図のようになっています。 延長した部分には、Q3パーツを10mmの長さに切断して 作ったスペーサをはさみました。 ところが、プレートの厚さが3.0mmであるのに対して、 Q3パーツの厚さは3.5mmなので、 そのままでは肩が傾いてしまいます。

Q3スペーサの写真

そこで、Q3パーツを10mmの長さに切り出し、 紙やすりで0.5mm分削ってスペーサを作りました。 上の写真のようにQ3パーツ表面の溝が無くなるまで 削るとおおよそ0.5mmほど削ることができます。

肩の3mmナットの写真

Q2パーツは、 3x10mm丸ビス3mmナットで 固定します。 また、P2パーツは、 オレンジ色のプッシュリベットで 固定します。

腕を付ける

次は、肩に腕を取り付けます。

腕の使用部品一覧
部材仕様個数
Q3パーツ10x70mm4
Q3パーツ10x85mm2
プッシュリベット黄色8

上膊に使うパーツは、 Q3パーツを70mmの長さに切り出したものです。

上膊部品の写真

また、下膊に使うパーツは、 Q3パーツを85mmの長さに切り出したものです。

下膊部品の写真

上膊(じょうはく)と下膊(かはく)

この説明文を書くために腕の呼び名を調べました。 腕立て君は、「肩からひじ」と「ひじから手首」の部分を 間接でつないだ腕を持っていますから、 これらのそれぞれの呼び名を調べたかったのです。

まず、「二の腕」という言葉を思いつきました。 そして、辞書を調べるとその反対語である「一の腕」という言葉が 見つかりました。 辞書には「一の腕は、肩からひじの部分」と書いてあります。 あれ?これは、「二の腕」のことじゃないの? これに対して、「二の腕は、肩からひじまでの部分」とあります。 あれ?何だか変だ。 辞書には、続いて、以下のように書いてありました。 「二の腕は、もともとはひじから手首までの部分を指していたが、 肩からひじまでと誤用されるようになり、こちらが一般的になった。」 この言葉は、使えないよ。

続いて浮かんだ言葉が、「上腕(じょうわん)」です。 反対語に「下腕(かわん?)」なんて言葉があるのかと期待して 辞書を見たところ、「上腕は、上膊の新しい言い方」 「下腕は、下膊の新しい言い方」と書いてあります。

「だから、上膊って何なんだ。」と思って上膊と下膊を辞書で引いて 結論が出ました。

上膊(じょうはく)
ひじから上の部分
下膊(かはく)
ひじと手首の間

というわけで、この文書では、この二つの言葉を使うことにしました。 日本語って難しいですね。

参考文献

金田一京助 新明解国語辞典 第五版, 三省堂, 1997年

新明解国語辞典第6版

最新版は第6版です。

腕の部品を切り出したら、黄色のプッシュリベットで取り付けます。 まずは、上膊を肩に取り付けます。 取り付け位置は、肩のQ2パーツの 1番目と4番目の穴です。

上膊の取り付け写真
上膊の取り付け写真(裏面)

左右の上膊を取り付けます。

両上膊の取り付け写真

更に下膊を取り付けます。 下膊は、肩のQ2パーツと 平行を保ったまま移動することが確認できます。

下膊の取り付け写真
下膊の取り付け写真(伸び)

ギヤボックスを取り付ける

次は、ギヤボックスを組み立てて取り付けます。 「ギヤボックスの組み立て方は、セットの説明書にあります」で 済めば良いのですが、そうできない事情があるのです。

ギヤボックスの使用部品一覧
部材仕様個数
ツインモータギヤボックス-1
六角シャフト3x27mm2
六角ボスとイモネジ-2
N5パーツ-2
プッシュリベットオレンジ2

ここで最終的に必要なギヤボックスは、 以下の写真のようなものです。 クランクの幅を肩の幅(75mm)よりもわずかに狭い73mmにすると クランクがスムースに回ります。

ギヤボックス要求仕様

ところが、このギヤボックスを組み立てるには、いくつか問題がありました。

リモコンロボット製作セットには、 「ツインモータギヤボックス」が付属しています。 ところが、付属のギヤボックスのシャフトには、 50mmの長いシャフトがついています。 このまま組み立てると、下の写真の右側のように、 クランクの位置が遠くなってしまい、使えません。 必要なのは、30mmのシャフトなのです。

長すぎるシャフト

これを回避するには、 50mmのシャフトを必要な長さにカットすればよいのですが、 鉄のシャフトを切断するのは大変そうです。 また、失敗しても代わりのシャフトはありません。 そのため、別の30mmのシャフトを調達してくる事にしました。

付属のシャフトには、もう一つ問題がありました。 シャフトには、ギヤから駆動力を取り出すために 六角ボスという部品が固定されます。 そのため、別のシャフトを調達して使う時には、 六角ボスも必要です。

下の写真の上側は、 リモコンロボット製作セットに付属の50mmシャフトで、 下側は、単品の「ツインモータギヤボックス」のシャフトと六角ボスです。

付属シャフトと単品シャフト

この写真をみてお分かりのように、 単品シャフトの六角ボスがイモネジによって固定されているのに対して、 付属シャフトの六角ボスは圧入によって固定されているので、 取り外して他のシャフトに使うことはできません。 困った、困った。

30mmシャフトと六角ボスは、2組必要です。 一組は、リモコンロボット製作セットに「クランクギヤボックス」の 部品として入っていましたので、これを使います。 「クランクギヤボックス」の短い六角シャフトの長さは、27mmです。 本当は、30mmシャフトが必要なのですが、 六角ボスの固定位置を以下のように調整することで対応しました。

六角ボスの27mmシャフトへの固定位置

もう一組は、別のギヤボックスを購入して、 その中から必要な部品だけを使うことにしました。 購入したのは、「3速クランクギヤボックスセット」です。 このセットには、27mmシャフトと六角ボスが入っています。

六角ボスの付いた27mmシャフトを二本用意したら、 ギヤボックスを組み立てます。 そして、N5パーツを取り付けたら、 ギヤボックスの準備は完了です。

組み立て済みギヤボックス

出来上がったギヤボックスは、 プッシュリベットを使って、プレートの以下の位置に固定します。

ギヤボックスの固定
ギヤボックスの固定(詳細)

クランクと腕をリンクさせる

次は、モータの出力であるクランクと 腕をリンク機構によって接続します。

リンク機構の使用部品一覧
部材仕様個数
Q3パーツ10x60mm2
プッシュリベット黄色4

リンク機構に使うパーツは、 Q3パーツを60mmの長さに切り出したものです。

リンク部品

この部品を使って以下の写真のように クランクと下膊部品を接続します。

クランクと腕のリンク
クランクと腕のリンク(裏側)

この時、クランクに差し込んだプッシュリベットが プレートと接触してしまうと、 腕の上下運動ができません。 プレートの上から見て、 プッシュリベットとプレートが接触しないかどうかを確認します。

プッシュリベットのクリアランス

もし、接触していた場合には、 クランクのシャフトへの差し込み深さを調節します。

足を取り付ける

腕立て君は、二本の腕と一本の足で体を支えます。 腕立て機構の組み立ての最後は、足を取り付けます。

足の使用部品一覧
部材仕様個数
Q3パーツ10x50mm1
Q2パーツ-1
丸ビス3x10mm2
ナット3mm2
プッシュリベットオレンジ2

足に使う部品は、Q3パーツを50mmの長さに切り出したものです。

足の部品

これをQ2パーツでプレートに垂直に立てます。

足の取り付け
足の取り付け(裏面)

機構部分の完成

以上で、機構部分の組み立てが終わりました。

完成側面図

以下の写真の位置まで前後の傾きを調節することができます。

最高点写真 最低点写真

2006-06-22 発行。

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