腕立て君の機構部分を作ります。 ロボットの機構部分というと、 部材の加工から行わなくてはならないのでしょうか? いいえ。 ここでは、田宮模型の「楽しい工作」シリーズの部材を使って 簡単にロボットを組み立てました。
このロボットは、 モータの回転運動を平行運動に変換する機構を使って腕を上下させ、 体を持ち上げます。 下の図は、腕を縮めた状態から伸ばした状態への変化を表しています。
上の図で、丸い部分がモータとクランクです。 クランクの先端は、大きいほうの円周を回ります。
一方、腕は、平行四辺形を形作っているので平行移動しかしません。 この腕にクランクからリンクをつなぐと、 モータの回転運動が腕の平行移動に変化します。
この腕の平行移動によって、ロボットは体を上下させることができます。
このロボットは、田宮模型の「楽しい工作」シリーズの部材を使っています。
ここから組み立ての工程を説明します。 それぞれの部材の加工法と使用法の詳細は、ここでは説明しません。 製作セットに付属の説明書を参照してください。
組み立ての最初の工程では、 肩を作ります。
部材 | 仕様 | 個数 |
---|---|---|
プレート | - | 1 |
P2パーツ | - | 1 |
Q2パーツ | - | 2 |
Q3パーツ | 10x10mm t3.0 | 2 |
プッシュリベット | オレンジ | 2 |
丸ビス | 3x10mm | 4 |
ナット | 3mm | 4 |
この工程では、 肩になるQ2パーツをプレートに 取り付けるのですが、そのまま取り付けると肩幅が狭くなり、 後の工程でクランクを取り付けたときに邪魔になります。 このため、P2パーツで肩幅を両側に10mmずつ延長したうえで、 Q2パーツを取り付けました。 この写真では、右肩しか取り付けていませんが、 実際には、両側に取り付けます。
肩の取り付け部分の詳細は、上の図のようになっています。 延長した部分には、Q3パーツを10mmの長さに切断して 作ったスペーサをはさみました。 ところが、プレートの厚さが3.0mmであるのに対して、 Q3パーツの厚さは3.5mmなので、 そのままでは肩が傾いてしまいます。
そこで、Q3パーツを10mmの長さに切り出し、 紙やすりで0.5mm分削ってスペーサを作りました。 上の写真のようにQ3パーツ表面の溝が無くなるまで 削るとおおよそ0.5mmほど削ることができます。
Q2パーツは、 3x10mm丸ビスと3mmナットで 固定します。 また、P2パーツは、 オレンジ色のプッシュリベットで 固定します。
次は、肩に腕を取り付けます。
部材 | 仕様 | 個数 |
---|---|---|
Q3パーツ | 10x70mm | 4 |
Q3パーツ | 10x85mm | 2 |
プッシュリベット | 黄色 | 8 |
上膊に使うパーツは、 Q3パーツを70mmの長さに切り出したものです。
また、下膊に使うパーツは、 Q3パーツを85mmの長さに切り出したものです。
この説明文を書くために腕の呼び名を調べました。 腕立て君は、「肩からひじ」と「ひじから手首」の部分を 間接でつないだ腕を持っていますから、 これらのそれぞれの呼び名を調べたかったのです。
まず、「二の腕」という言葉を思いつきました。 そして、辞書を調べるとその反対語である「一の腕」という言葉が 見つかりました。 辞書には「一の腕は、肩からひじの部分」と書いてあります。 あれ?これは、「二の腕」のことじゃないの? これに対して、「二の腕は、肩からひじまでの部分」とあります。 あれ?何だか変だ。 辞書には、続いて、以下のように書いてありました。 「二の腕は、もともとはひじから手首までの部分を指していたが、 肩からひじまでと誤用されるようになり、こちらが一般的になった。」 この言葉は、使えないよ。
続いて浮かんだ言葉が、「上腕(じょうわん)」です。 反対語に「下腕(かわん?)」なんて言葉があるのかと期待して 辞書を見たところ、「上腕は、上膊の新しい言い方」 「下腕は、下膊の新しい言い方」と書いてあります。
「だから、上膊って何なんだ。」と思って上膊と下膊を辞書で引いて 結論が出ました。
というわけで、この文書では、この二つの言葉を使うことにしました。 日本語って難しいですね。
金田一京助 新明解国語辞典 第五版, 三省堂, 1997年
最新版は第6版です。
腕の部品を切り出したら、黄色のプッシュリベットで取り付けます。 まずは、上膊を肩に取り付けます。 取り付け位置は、肩のQ2パーツの 1番目と4番目の穴です。
左右の上膊を取り付けます。
更に下膊を取り付けます。 下膊は、肩のQ2パーツと 平行を保ったまま移動することが確認できます。
次は、ギヤボックスを組み立てて取り付けます。 「ギヤボックスの組み立て方は、セットの説明書にあります」で 済めば良いのですが、そうできない事情があるのです。
部材 | 仕様 | 個数 |
---|---|---|
ツインモータギヤボックス | - | 1 |
六角シャフト | 3x27mm | 2 |
六角ボスとイモネジ | - | 2 |
N5パーツ | - | 2 |
プッシュリベット | オレンジ | 2 |
ここで最終的に必要なギヤボックスは、 以下の写真のようなものです。 クランクの幅を肩の幅(75mm)よりもわずかに狭い73mmにすると クランクがスムースに回ります。
ところが、このギヤボックスを組み立てるには、いくつか問題がありました。
リモコンロボット製作セットには、 「ツインモータギヤボックス」が付属しています。 ところが、付属のギヤボックスのシャフトには、 50mmの長いシャフトがついています。 このまま組み立てると、下の写真の右側のように、 クランクの位置が遠くなってしまい、使えません。 必要なのは、30mmのシャフトなのです。
これを回避するには、 50mmのシャフトを必要な長さにカットすればよいのですが、 鉄のシャフトを切断するのは大変そうです。 また、失敗しても代わりのシャフトはありません。 そのため、別の30mmのシャフトを調達してくる事にしました。
付属のシャフトには、もう一つ問題がありました。 シャフトには、ギヤから駆動力を取り出すために 六角ボスという部品が固定されます。 そのため、別のシャフトを調達して使う時には、 六角ボスも必要です。
下の写真の上側は、 リモコンロボット製作セットに付属の50mmシャフトで、 下側は、単品の「ツインモータギヤボックス」のシャフトと六角ボスです。
この写真をみてお分かりのように、 単品シャフトの六角ボスがイモネジによって固定されているのに対して、 付属シャフトの六角ボスは圧入によって固定されているので、 取り外して他のシャフトに使うことはできません。 困った、困った。
30mmシャフトと六角ボスは、2組必要です。 一組は、リモコンロボット製作セットに「クランクギヤボックス」の 部品として入っていましたので、これを使います。 「クランクギヤボックス」の短い六角シャフトの長さは、27mmです。 本当は、30mmシャフトが必要なのですが、 六角ボスの固定位置を以下のように調整することで対応しました。
もう一組は、別のギヤボックスを購入して、 その中から必要な部品だけを使うことにしました。 購入したのは、「3速クランクギヤボックスセット」です。 このセットには、27mmシャフトと六角ボスが入っています。
六角ボスの付いた27mmシャフトを二本用意したら、 ギヤボックスを組み立てます。 そして、N5パーツを取り付けたら、 ギヤボックスの準備は完了です。
出来上がったギヤボックスは、 プッシュリベットを使って、プレートの以下の位置に固定します。
次は、モータの出力であるクランクと 腕をリンク機構によって接続します。
部材 | 仕様 | 個数 |
---|---|---|
Q3パーツ | 10x60mm | 2 |
プッシュリベット | 黄色 | 4 |
リンク機構に使うパーツは、 Q3パーツを60mmの長さに切り出したものです。
この部品を使って以下の写真のように クランクと下膊部品を接続します。
この時、クランクに差し込んだプッシュリベットが プレートと接触してしまうと、 腕の上下運動ができません。 プレートの上から見て、 プッシュリベットとプレートが接触しないかどうかを確認します。
もし、接触していた場合には、 クランクのシャフトへの差し込み深さを調節します。
腕立て君は、二本の腕と一本の足で体を支えます。 腕立て機構の組み立ての最後は、足を取り付けます。
部材 | 仕様 | 個数 |
---|---|---|
Q3パーツ | 10x50mm | 1 |
Q2パーツ | - | 1 |
丸ビス | 3x10mm | 2 |
ナット | 3mm | 2 |
プッシュリベット | オレンジ | 2 |
足に使う部品は、Q3パーツを50mmの長さに切り出したものです。
これをQ2パーツでプレートに垂直に立てます。
以上で、機構部分の組み立てが終わりました。
以下の写真の位置まで前後の傾きを調節することができます。
2006-06-22 発行。