この号には、頭部の試験用コントローラボードが付属していました。 本技術解説では、このコントローラボードについて考察を行います。
頭部のモータを駆動するのは、コントローラボードのこの部分です。 右側に黒く見えるのは、制御を行っているマイコンと思われます。
頭部のモータは、コントローラボード上のマイコンから出力される 二本のデジタル信号によって制御されます。 写真を基に書き起こしたのが、下の回路図です。
これら二本の信号、FORWARDとBACKWARDによって、 モータは正転、逆転、停止を行うことが出来ます。
この駆動回路で使用されているトランジスタのうち、 B9DおよびD9Dとマーキングされているトランジスタは、 Hi-Sincerity Microelectronics Corp.( http://www.hsmc.com.tw/ )の HMBT8050およびHMBT8550らしいという事をつきとめました。 ところが、プリドライバ(Q9/Q10)は、マーキングが不鮮明であったため 出所を突き止めることができず、 NPNかPNPかという確認さえできませんでした。 プリント基板を手がかりにして書いた回路図では、 各端子の接続状況からプリドライバは、NPNであると仮定しています。
ただ、このままの回路ですと、マイコンの出力が電流制限抵抗なしに ベース端子に供給されてしまい、過剰なベース電流がQ10とQ3、または、 Q9とQ4に流れ込んでしまいます。 マイコンの出力自体に抵抗成分が内蔵されているのかも知れません。
モータの駆動と並ぶこの制御基板の重要な機能が、 LED(発光ダイオード)を光らせることです。 頭部には、以下のように全部で20個のLEDが装備されています。
部位 | 色 | 個数 |
---|---|---|
左耳 | 白 | 1 |
左目 | 赤 | 3 |
黄 | 3 | |
緑 | 3 | |
右目 | 赤 | 3 |
黄 | 3 | |
緑 | 3 | |
右耳 | 白 | 1 |
合計 | 20 |
私のロボットの場合、 耳に入っているLEDの色はどちらかというと青に近いのですが、 中に蛍光剤が見えたので、「白」だと思うことにしています。 これらのLEDを光らせるためのLED駆動回路が、 制御基板の下の部分にあります。
この部分もモータ駆動回路と同様に マイコンらしき黒い部分から制御信号が伸びています。 この写真を基に書き起こしたのが、下の回路図です。
LEDの色ごとに一つずつNPN型のトランジスタが配置されています。 このため、この制御基板では、両目、両耳のLEDを 同じようにしか光らせることができません。 第一号に付属していたDVDの映像を見る限り、 LEDは左右別々に点灯していました。 このため、この制御基板がLEDを駆動するのは、 頭部のテストの時だけだろうと推測しています。
それぞれのLEDには、電流制限用抵抗が一つずつ付いています。 この制御基板には、目のLEDの抵抗は搭載されていませんが、 それらのLEDの抵抗は、目の基板部分に搭載されています。 目の基板については、 目のLED基板 に記述があります。 それぞれの抵抗値と推定順方向電圧降下から計算された電流値は、 以下のようになります。 ただし、電源電圧を単三電池三本で4.5Vとしています。
色 | 抵抗値 (Ω) | 電圧降下 (V) | 電流値 (mA) |
---|---|---|---|
赤 | 360 | 1.8 | 7 |
黄 | 68 | 3.3 | 16 |
緑 | 68 | 3.3 | 16 |
白 | 68 | 3.3 | 16 |
一番電流が流れるのは、 両耳の白色LEDと両目の緑色LEDが点灯する場合で、 全体で128mAの電流が流れる計算になります。 これにモータを駆動する電流が加わると、 冬は動作が緩慢になるわけです。
2005-12-13 モータ駆動回路を加えた。
2005-12-14 LED駆動回路を加筆。
2006-10-12 XHTML書式に対応した。