この号には、マザー・ボードが付属していました。 本技術解説では、このマザー・ボードについて考察を行います。
この基板には、さまざまな部品が使用されています。 まずは、使用されている部品の素性を調べることから始めました。 ここでは、主要な部品についてのみ解説します。
マイコンは、 Freescale Semiconductorの MC68HC908AP8というチップが使用されています。
データシートなどの情報は、以下の場所で入手できます。
8ピンのSOICパッケージのICは、OPアンプです。 National Semiconductorの LMV358という製品です。
データシートなどの情報は、以下の場所で入手できます。
6ピンのTSOTパッケージのICは、DC/DCコンバータです。 "SFEB"というマーキングしかありませんが、 National Semiconductorの LM2734Yという製品です。
データシートなどの情報は、以下の場所で入手できます。
この基板には、二つダイオードが使用されています。 そのうち、黒いパッケージに入ったショットキー・バリア・ダイオードは 電源部で重要な役割を果たします。 これは、Vishayの SS1P3Lという製品です。
データシートなどの情報は、以下の場所で入手できます。
基板上のJ1コネクタには、バッテリーボックスが接続されます。 バッテリーボックスから供給された電力は、二つの目的で使用されます。
バッテリー・ボックスからは、公称4.5Vと7.5Vの二種類の電源が供給されます。 15号でヘッドコントローラ・ボードを 使用したときには、4.5Vの電源がロジック電源として使用されていました。 このマザー・ボードでは、4.5Vの電源をDC/DCコンバータで降圧して、 各ボードに電力を供給するので、 ヘッド・コントローラ・ボードでも降圧された電源が使用されます。
基板をもとにして回路図を書き起こしました。
LM2734Yは、FB端子の電圧が0.8Vになるように制御を行うので、 VDDには、3.05Vの電圧が発生します。 私の基板での実測では、3.06Vになっていました。
ここから、公称4.5Vの電源(V4P5)に必要な最低電圧が割り出せます。 LM2734Yの最大デューティ比は、90%(MIN)です。 そのため、無負荷状態でもV4P5には3.4V以上の電圧を必要とします。 さらに、LM2734Yの内部トランジスタのON抵抗が600mΩ(MAX)なので、 1Aの電流を供給すると0.6V落ちてしまいます。 よって、厳密にいうと単純な足し算にはなりませんが、 V4P5の最低電圧は4.0V程度必要になると考えられます。 また、LM2734Yの個体差によって、最低電圧はもっと低くなるはずです。 それにしても、Ni-Cd電池3本で駆動するには厳しい値ですね。
OPアンプ(LMV358)は、 電源電圧を検出するためのセンサとして使用されています。
OPアンプは、単純なボルテージフォロアとして使用されています。 データシートによれば、 LMV358の入力に印加可能な電圧は、 最低が0Vで最高がLMV358の電源電圧より1.0V低い電圧です。 電源電圧は3.05Vなので、0.0Vから2.05Vということになります。
公称4.5VのV4P5の電圧は、0.5倍にされてマイコンのA/D入力端子に 導かれます。 このため、V4P5の印加可能最大電圧は、4.10Vになります。 また、公称7.5VのVPWRの電圧は、0.22倍されて、同じくマイコンの A/D入力端子に導かれます。 このため、VPWRの印加可能最大電圧は、9.3Vになります。
これらの印加可能最大電圧よりも高い電圧が与えられた場合には、 LMV358の出力が正常に動作する保証がないので、 これらの値がバッテリーに与えることのできる最大電圧ということになります。 V4P5には、4.10Vしかかけられないのですか? 何か変だな。
15号の ヘッドコントローラ・ボードでは、 LM358が使用されていました。 ところが今回はLMV358が使用されています。
これらのOPアンプの電源電圧範囲は、 LM358は3Vから32Vで、LMV358は2.7Vから5.5Vと LMV358の方が低電圧仕様に作られています。 このため、電源電圧の3.05Vに対して余裕をとることができます。
加えて、入出力に許されている電圧範囲が、 LMV358はLM358に比べて広くなっています。 このため、LMV358の代わりにLM358を使用した場合には、 電圧検出回路の分圧比をさらに高くする必要があります。 このことは、マイコンのA/D入力の電圧が低くなる事を意味し、 その変換精度に影響するからという理由であろうと思われます。
J5コネクタは、 音声認識ボードと接続するために使用されます。
信号の構成を見たところ、 音声認識ボードとの通信にはSCIが使用されているようです。 加えて、ハードウェア割り込みも使用されています。
TxD端子は、オープンドレイン出力の機能しかもっていません。 このため、ボード上にプルアップ抵抗が配置されています。
プリント基板には、L3というランドが配置されていて、 いかにもノイズフィルタ代わりのコイルが使われるように見えるのですが、 実装されていたのは、0Ωの抵抗器でした。
J6コネクタは、 液晶表示(LCD)モジュールと接続するために使用されます。
気がかりは、Q1とシルク印刷された部品の実装されていないパターンです。 この部分に入るべき部品を想像しながら、回路図を描きました。
回路図を描いてみて、Q1にはNPNトランジスタが、 隣にはベース抵抗が入るらしいことがわかりました。 どうやら、このパターンは、 LCDモジュールのバックライトを駆動する仕掛けのようです。 しかも、お休みモード時など、バックライトが必要の無い時には、 PTB7出力を"LOW"レベルにしてバックライトを消すことができるように なっている念の入れようです。
だからといって、ここにトランジスタと抵抗を実装してもバックライトは 点灯しません。 LCDモジュールに使用されているGDM1602Hには、 バックライト用LEDの有り無しで二つのタイプがあります。 マイロボットで使用されているLCDモジュールにはバックライトの 無いタイプなので、たとえ部品を実装しても光りません。
バックライトつきのLCDモジュールを変わりに付けることができたら、 トランジスタと抵抗を実装して試してみる価値はありそうです。
それにしても、何でR10(120Ω)抵抗だけは実装してあるんでしょうね。
通常、あまたある1602タイプのLCDモジュールの電源電圧は、5.0V標準です。 電源投入シーケンスには、電源電圧が4.5Vに達してから初期化が始まると 書いてあるので、 パワーオンリセット電圧がこのあたりに設定されているのがわかります。
ところが、このLCDモジュールは、DC/DCコンバータによって作られた 3.05Vの電源が供給されています。 これでは、通常のLCDモジュールの場合には、 電源電圧が4.5Vまで上がらないので、 リセットがかかったままになります。 GDM1602Hの場合には、3Vにも対応するインターフェースを採用しているため、 電源電圧が3.0Vしか与えられない場合にも使用できるのだと思われます。 ただし、電源電圧が3.0Vの場合のパワーオンリセット電圧については、 データシートにも言及されていません。
データシートによると、 コントラスト調整用の端子V0には、 標準でVDD-4.6Vの電圧を与えることになっています。 ところが、この回路では単に10kΩと100&Omeaga;の抵抗でVDD電圧を 分圧した電圧がV0に与えられています。 実測値で0.058Vなので、VDDとの電位差は、約3.0Vしかありません。
これでは、コントラストが低すぎて、 LCDを表示することが出来ないように思われるのですが、 実際には十分なコントラストが得られています。
LCDモジュールに何らかの仕掛けがあって、 3.0Vの電位差でもコントラストが得られるのか、 それとも3.0Vに対応した液晶パネルなのか、 真相はなぞのままです。
J7コネクタは、 ブルートゥースボードと接続するために使用されます。
信号の構成を見たところ、 ブルートゥースボードとの通信にはSCIが使用されているようです。 加えて、ハードウェア割り込みも使用されています。
また、SCTxD端子とSCRxD端子には、 プルアップ抵抗が実装されています。
J8コネクタは、 キーボードと接続するために使用されます。
これらの端子には、マイコン内部にプルアップ抵抗が付いていません。 そのため、外部にプルアップ抵抗が必要になったようです。
どの端子もタイマにつながっているのですが、 キー入力ごときにタイマ機能を使うとも思えないので、 他の端子を割り当ていって、 残ったピンがたまたまタイマ付き端子だったということだろうと考えています。
J9およびJ10コネクタは、 ヘッドコントローラボードと接続するために使用されます。
J9が信号線として使用され、 J10が電源線として使用されます。
信号線には、I2Cの二本のバスラインが通ります。 このコネクタの近くにバスラインをプルアップするための 4.7kΩの抵抗が配置されています。 この抵抗は、ロボット全体のバスラインのプルアップ抵抗として働きます。
プリント基板には、VDDにL2というランドが配置されていて、 いかにもノイズフィルタ代わりのコイルが使われるように見えるのですが、 実装されていたのは、0Ωの抵抗器でした。
J11コネクタは、 ブレインボードと接続するために使用されます。
このコネクタの信号線は、 I2Cバス、SPI、SCIの3種類の インターフェースで構成されており、 さらにハードウェア割り込みも装備された贅沢な内容になっています。
SS*端子には、プルダウン抵抗が実装されています。 なぜ、プルアップではないのかは、不明です。
それぞれのインターフェースが具体的に何に使用されるかという詳細は、 今の段階では不明です。
ここにも、VDDにL4というランドが配置されていて、 いかにもノイズフィルタ代わりのコイルが使われるように見えるのですが、 実装されていたのは、0Ωの抵抗器でした。
2007-09-21 公開
Updated: $Date: 2007/09/21 13:36:12 $
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